オートフォーカスは、多くの組み込みビジョンアプリケーションに必要な重要な機能の1つです。オートフォーカスカメラモジュールは、通常、画像キャプチャ中にターゲットオブジェクトまでの距離が変化し続ける場合に使用されます。これには、カメラがターゲットオブジェクトにすばやくロックして、ピントが合っていることを確認する必要があります。オートフォーカスカメラを必要とする可能性のあるアプリケーションには、産業用ハンドヘルド、ドキュメントスキャナー、歯科用カメラなどがあります。
オートフォーカスカメラの設計には、液体レンズまたはボイスコイルモーター(VCM)いずれかのオートフォーカス機能を持った専用レンズを使用する必要があります。
しかし、上記で説明した2つの方法から適切なレンズをどのように選択するのか?アプリケーションまたは製品用に手法を選択する際に考慮する必要がある要素は何か?それぞれどこで使われるのか? この記事では、これらの質問に詳細に答えることを目指しています。
オートフォーカスレンズを選ぶ際に考慮すべき要素
液体レンズとVCMレンズのどちらを選択するかを決める基準は主に9つあり、以下のとおりです。
- 熱放散の量
- 精度と寿命
- 動作温度範囲
- フォーカスにかかる時間
- 消費電力
- サイズと重量
- レンズマウントのタイプ
- コスト
- サプライチェーンと可用性
それではこれから詳しく説明していきましょう。
熱放散の量
VCMオートフォーカスレンズでは、オートフォーカスはレンズの機械的な動きによって実現されます。カメラが焦点距離を変更する必要があるたびに、イメージセンサーに対するレンズの位置を変更する必要があります。そのためレンズが頻繁に動作すると摩擦による熱の放散が多くなります。
一方、液体レンズでは、オートフォーカスは、レンズに印加された電界に応じてレンズ内の液体が移動することによって実現されます。これは、焦点距離を変更するためにレンズの位置を変更したり、機械的に移動したりする必要がないことを意味します。このため、VCMレンズと比較して、液体レンズの熱放散ははるかに少なくなります。
したがって、製品またはアプリケーションで熱を気にされる場合は、液体レンズを使用することをお勧めします。
精度と寿命
VCMレンズの絶え間ない動きは、その機械部品の摩耗を引き起こします。これにより、寿命が短くなります。また、この摩耗は時間の経過とともに精度の低下につながる可能性があります。したがって、高い寿命と精度が要求される場合は、液体レンズを用いたオートフォーカスカメラをお勧めします。
動作温度範囲
液体オートフォーカスレンズは熱の放散が少ないため、VCMレンズとは対照的に、より広い温度範囲で確実に動作出来る傾向があります。多くの組み込みビジョンの用途、特にカメラを産業環境で動作させる必要がある場合は、高温域での動作を考慮する必要があるため、液体レンズをお勧めします。
フォーカスにかかる時間
VCMの場合、フォーカスを変更するためにモーターを使用します。焦点が合うまでに多少の時間がかかります。一方液体レンズは、数ミリ秒という短い時間で素早く焦点を合わせることが出来ます。
さまざまな距離にあるオブジェクトなど2つの連続する画像をキャプチャする際の時間遅延を気にするアプリケーションでは、液体レンズが役立ちます。
消費電力
VCMでは、モーターが定期的に動くため、液体レンズよりも電力を消費します。したがって、オートフォーカスカメラへの電力に制限がある場合は、液体レンズを使用することは電力効率を最適化する方法の1つです。
サイズと重量
VCMレンズにはいくつかの機械部品があります。 また、焦点距離を調整するためにレンズが前後に動くためのスペースが必要です。これらにより、VCMレンズは液体レンズよりもかさばります。また、重量も重くなります。
レンズマウントのタイプ
VCMモーターは、携帯電話に見られるような小さなカメラにしか電力を供給できません。 M8またはM12レンズでオートフォーカスを実現したい場合は、液体レンズが最適です。
コスト
前述した説明したすべての特徴と機能に関して、液体レンズがVCMレンズよりもはるかに優れていることを示しています。ただし、これらのメリットにはコストがかかります。VCMテクノロジーは、液体レンズのオートフォーカスと比較して費用対効果が高いです。量産規模が大きい場合、VCMは価格面で液体レンズを圧倒的に優位です。
サプライチェーンと可用性
VCMレンズのサプライチェーンエコシステムは広範囲であり、液体レンズと比較し可用性ははるかに優れています。 したがって、VCMレンズの場合はより優れたサプライヤーを選択できる可能性があります。
結論
弊社の結論は以下の通りです。オートフォーカスレンズの選択は、主にアプリケーションまたは最終製品によって異なります。事前に定義された焦点距離の設定がないようなアプリケーションの場合は、液体レンズを使用する必要があります。OCRリーダーまたはカメラはそのアプリケーションの一例です。同時に、精度、寿命、消費電力、レンズマウントなどの点でスペックに余裕がある場合は、液体レンズよりもVCMレンズを選ぶことができます。したがって製品を選択する前に、上記で説明したすべての要素を詳しく調べることをお勧めします。
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Prabu Kumarは、e-con Systemsの最高技術責任者兼カメラ製品責任者であり、組み込みビジョン分野で15年以上の豊富な経験があります。彼は、USBカメラ、組み込みビジョンカメラ、ビジョンアルゴリズム、FPGAに関する深い知識をも有しています。医療、工業、農業、小売、生体認証などのさまざまなドメインにまたがる50以上のカメラソリューションを構築してきました。また、デバイスドライバー開発とBSP開発の専門家でもあります。現在は、新時代のAIベースのアプリケーションを強化するスマートカメラソリューションの構築に全力を注いでいます。